富沢小径

completed in 2018

  • category 共同住宅

  • location 東京都中央区

  • total floor area 352.73㎡

  • consultant TS構造設計

  • contractor Ogawa Tec.

職住近接の街に住まう

人形町駅から数分の, 家業を営む昭和中期の小型~中規模建物が多い地域である. バブルによる人口減に対する中央区の大型共同住宅への容積緩和条例により, 建て替えが進む一方で,近年は古い建物のリノベーションが始まったエリアでもある.建設費の高騰に加え, 5階以上の住居の制限, 2直階段の制限,耐火構造の制限など,数十年前とは比較にならない法規制の中で,かろうじて新築でも個人事業 者にとって成立する規模として, 今後の耐用年数を含め,新築で計画することとなった.
この地域へは,私自身15年前に築40年の建物を改装して移り住んだ.そこで見えてきたことは,空間からは失われた江戸が個人の中で生き生きと残っているという, 人の風景であった.この街では春から 秋にかけては毎週のようにどこかでお祭りがある. 表から見る戦後の建物群は,中の様子も分からないファサードの連なりなのだが,いざ街のこととなると放っておけない人たちが通りに出てきて支え合っている.よく見ると,小中規模の建物の各層からはいろいろな世代・職業の人びとが現れる.昨日はバイク屋,今日は小料理屋といったように,時代や世代の中で柔軟に家業自体も変化させながら,上に下に移動を繰り返し,街を維持する.ここはそんな人びとの職住近接の街なのだ. 建物規模は,小規模ビル用EVの最大昇降高さ+2直階段を不要とする5階以上の住居サイズ(5階のみに玄関を持つメゾネット)から決めた.耐火被覆の柱や梁を避けながら法的屋内階段幅をとると,最上階までの面積ロスは大きくなっていく.表に階段を出 すことで,それらを抑えながら,上下階の関係が街並みに表出する場とした. 階段の折り返しから階高を決め,その階ごとに大きく開く扉とテラスを設け, どのユニットも,仕事場にも生活の場にもなる土間を並べている.区の容積緩和は,既に人口目標を達成し, この夏の終了が決まる中, 今年中に, この建物周囲だけでも9つの建物が3つのマンションに建て替わっていく. 建物の大型化による容積の緩和自体を否定しないが, この街の職住近接のよさを鑑みると, むしろ低層部数層への仕事場の設置の義務付けを緩和条件にする方が街の魅力を伸ばしてくれるのではと思っている.

photo by Shinkenchiku-sha

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